会長挨拶
札幌民事調停協会 高橋 智
民事調停は、多くの市民や代理人弁護士が廉価で迅速に解決できる強力なツールです。民事調停では、専門的な訴訟とは異なり、簡易な申立をして自ら調停に出向いて説明をして裁判所に紛争の実態を伝えることができます。
民事訴訟と異なり、公開の法廷ではなく非公開の小さな調停室で、当事者のお話を裁判官+調停委員2名で組織する調停委員会が、交互にうかがうので、気軽に申立できると思います。申立に必要な印紙額は、訴訟を提起する場合の半額に設定されています。請求額を当面定めず、相当額を求める調停も可能で、その場合に必要な印紙額は6,500円です。調停が不成立になった後、引き続き2週間以内に訴訟提起する場合には差額分を追納すればよいというメリットもあります。
そして、相手方当事者も呼び出してもらい、相手方からも裁判所に事情を聴いてもらって、よりよい解決を提案してもらえるのです。
裁判といえば、時間がかかるという印象だと思いますが、民事調停では、短い期間で、双方が集中的に話合い、裁判所から解決案を提案する等して、一気に解決することを目指しています。民事調停事件の平均審理期間は100日(約3ヶ月半)程度です。
また、建築紛争、労働紛争、医療事故、交通事故等の調停では、その分野の専門的資格(医師、不動産鑑定士、建築士等)をもつ調停委員や弁護士資格を持つ調停委員が対応に当たるというのも、使い勝手が良い理由の一つです。他方、一般市民代表の調停委員や女性の調停委員も多いので、市民感覚も解決に生かすことも可能となっています。
身近におきた紛争を、訴訟で解決するということになると、過剰なストレスや経済的に割が合わないということもあるでしょう。そのようなときは、すぐに紛争解決を諦めないで、調停を申し立てて、やるだけのことをやってみてはどうでしょうか。
民事調停は日本人のマインドに最も適した和解を目指した制度だと言われています。相手方の気持ちを調停委員を通じて理解できただけで、心が救われるということもあるのではないでしょうか。是非、紛争解決に一歩踏み出してみてください。解決しようと一歩踏み出さない限り、悩みに終わりはありません。