会長挨拶
札幌民事調停協会の会長をしております弁護士の毛利節と申します。平成5年に弁護士登録をし、その後、平成25年から民事の調停委員に選任されています。
以下では、民事調停制度をより多くの方にご利用頂きたく、制度概要についてご紹介させて頂きます。なお、手続の詳細は、最高裁裁判所のホームページ(民事調停 | 裁判所 (courts.go.jp)をご覧下さい。
1 調停制度のはじまり
調停制度と言いますと、離婚調停や遺産分割調停と言った家庭裁判所での家事調停を思いつく方が多いかもしれませんが、我が国の調停制度は、関東大震災の後の借地借家の紛争解決のために制定された借地借家調停法がその始まりとなっており、民事の調停制度は2022年に発足から100周年を迎えた大変歴史のある制度です。
2 民事調停制度ってどんな制度?
民事調停は、裁判のように裁判官が当事者の主張や立証(証拠の提出のこと)に基づいて、勝ち負けを決める手続ではなく、話し合いによりお互いが合意することによって紛争の解決を図る手続です。そのようなことから当事者の自主性が最大限尊重されますし、また、裁判所の非公開の場で行われますので、秘密も守られます。
3 民事調停制度って、誰が進めるの?
調停の申立があると、裁判所で調停委員会が構成され、調停委員会が裁判所において話し合いの場を設定して手続が進められます。調停委員会は、調停官(裁判官や裁判所から選任された弁護士)と一般市民の中から選任された有識者調停委員(事案に応じて、医師、建築士、弁護士等の専門家が選任されることもある)で構成されます。
諸外国の例を見ても、調停官(裁判官)のみや民間の有識者のみで構成される調停的制度はあっても、両者がペアになって構成される制度は日本だけのものと言われています。その意味で、日本の調停制度は、法的観点を踏まえつつも、社会常識や背景事情を反映した妥当で落ち着きの良い紛争解決を導くための非常に優れた制度と言えます。
4 申立ては大変なの?
上記のとおり、民事調停は、裁判とは違って、厳密な意味での主張や立証は必要とされていないので、申立書には、紛争の要点・実情が分かる程度に内容を記載して頂ければ十分です。もし、必要な事項が出てくれば、調停官や調停委員から補充して聞かせて頂きます。
5 費用はどれくらいかかるの?
民事調停制度は、通常裁判の半分の費用基準が設定されており、500円のワンコイン(経済的利益が10万円以下の場合)から利用することができる、大変お得な制度となっています。
6 期間はどれくらいかかるの?
民事調停の平均の審理期間は約4ヵ月程度となっており、通常裁判よりもかなり早期の解決が想定されています。
以上のとおり、民事調停制度は、早い、安いだけではなく、手続が容易で、かつ大変充実した紛争解決制度となっていますので、是非、ご活用をご検討頂ければ幸いです。